2015年12月17日木曜日

土砂災害警戒区域指定の土地減価?

http://www.professional-eye.com

(質問)

今般、土地を購入しまして、現在家を建築中です。その購入した土地ですが、重要事項

説明の中身について誤りがあり、土砂災害指定区域「外」が「内」であることがわかり

ました。先方は否を認めているのですが、先方自ら割り引く考えはなく、損害賠償され

れば検討するが、その場合は、根拠を出せと言ってきています。

ここで相談ですが、


「土砂災害指定区域」に指定された場合、指定される前を1とした場合、どの程度価値が

変動しますか。

(回答)

近年、集中豪雨や大型台風の上陸等によって、裏山が崩壊し、その直下にある住宅等が

土砂に押し崩されるような事案が急激に増加する中、地方公共団体が土砂災害防止法に

基づき土砂災害の恐れのある区域を「土砂災害警戒区域、以下、警戒区域という」に指

定し、その危険を住民に周知することにより、防災対策等を図っていこうとするのが法

の趣旨です。

この警戒区域は、先の東日本大震災後、急速に指定される箇所が増加しています。

私が住んでいる横浜では丘陵地を開発した住宅地が多いため、警戒区域に指定されてい

る区域は比較的多いようですが、震災後、慌てて指定された区域が多く、指定年月日は

平成23年秋頃が最も多いのではないでしょうか。

先に述べましたように、横浜では警戒区域が多いため、不動産鑑定評価書には土砂防止

法に基づく「警戒区域」又は「特別警戒区域」であるか否かの記載をしていますが、調

査のため、インターネットで神奈川県の警戒区域指定マップにアクセスすると、マップ

は住宅地図では無く、地形図にプロットされているため、位置の確定にはそれなりの慎

重さが必要となります。

あなたの宅建業者は十分な調査をせず宅地を仲介又は売買したのですから、その責任は

重いものであり、開き直りとも思われる対応をしていることに憤りを感ぜずにいられま

せんが、堪えて、不動産鑑定士という立場から、以下ご質問にご回答させて頂き

ます。

警戒区域に指定された前と指定された後での価値の変動について、私は基本的には

価値に大きな変動は無いと考えます。

なぜなら、価値はその土地が従来から持つ個性の問題であり、行政が警戒区域に指定し

たか否かによって価値が変化するということはないと思うからです。

ただ、大きな震災を経験するなか、市場性の観点からは、警戒区域に指定されれば、需

要が劣ることも考えられるため、全く影響が無いわけではないとも考えます。

けれど、警戒区域に指定されていようとも、あなたの土地が概ね平坦で敷地内に法や崖

地、傾斜部分も無く、また、あなたの土地が土砂流出による危険性の程度が低いなら

ば、単に指定されていても減価はしないと考えます。

また、警戒区域に指定されていても、特別警戒区域でない限りにおいては、建築等にあ

たって制限が課されるわけではありませんので、指定前と同じ規模、構造の建物の建築

は可能です。

「土砂災害特別警戒区域」内であれば、建物の構造上の規制がありますから、場合によ

っては通常の住宅を建てるよりもコストを要し、知らなかった場合にはこのコスト差額

分が少なくとも減価されるべきですし、この部分を賠償するように宅建業者に請求する

ことも有り得ると思います。

仮にあなたの土地の個性が強くて、警戒区域に指定されていることが判明したため市場

性が劣り、そのため減価が発生したとしても、その減価率の査定は非常に困難で、理論

的な根拠については、希薄にならざるを得ないと考えますが、もし減価するとしても数

パーセントに止まるでしょう。

最近、ある新築分譲マンションにおいて、警戒区域のいう記述を重要事項説明書に記載

しなかったために、いざ引き渡しの段になり、居住予定者が問題化し、

結果として解約(契約自体がなかったことにする)をすることが可能としたケースがあ

りましたので、減価が全く無いということにはならないと思います。

人々の防災意識の高まりとともに、このような区域に指定されていることが減価の要因

として徐々に高まりつつあるのではないでしょうか。

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